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映画と革命の人、足立正生

 時に、ロフトプラスワンでは様々なカッコいいオヤジ達に会うことができる。右翼の鈴木邦男、左翼の塩見孝也、オタク評論家の唐沢俊一、元噂の真相編集長の岡留安則、映画監督の若松孝二──タイプは違うが皆それぞれに魅力的なオヤジ達だ。そして、今回紹介したいのは、2000年にレバノンから日本に帰国(強制送還)した、映画と革命の人、足立正生についてだ。

lpo_adachi.jpg 足立正生。1939年福岡県生まれ。日大在学中に撮った『鎖陰』が一躍話題となり若くして注目をあびる。そして、当時既に低予算のピンク映画を、エロスと暴力とアートに昇華した斬新な手法で時代の寵児となっていた若松孝二監督率いる若松プロの門を叩き、『血は太陽より赤い』(若松孝二監督、1966)で初助監督を務める。以降、大和屋竺らと共に若松プロ作品の多くの脚本を手がけ(『胎児が密猟する時』『狂走情死考』『ゆけゆけ二度目の処女』等多数)、60年代後半の全共闘運動の大きなうねりの中で、革命的な映画を次ぎ次と世に生み出していく。その大胆かつ政治的で明晰な思考は若松孝二にも大きな影響を与えた。
 ここで、後に若松監督がこの頃のことを振り返って語った言葉を引用してみたい。当時のアングラ映画制作時の熱気までもが伝わって来る発言だ。

「それからもう、足立のことがすごく好きになっちゃって「きみ、すぐ本を書いてみろ」って言った。ぱっと書いてきたのが『引き裂かれた情事』('66)ていう脚本。これを撮った。
 それは女が刑務所から脱獄する話だった。いろんな地下道とかを逃げるんだけど、渋谷から原宿にかけて遊歩道になっている下が下水道になっている。それが多摩川までつながっているという設定にした。腰のあたりまで水に浸って、ウンチとかコンドームとかがいっぱい流れてる中に入って行って撮影した。
 やっと多摩川に女囚たちが抜け出すと、多摩川の河原に小屋を建てて1人で住んでいるキリストと呼ばれている乞食に、みんながかくまわれるっていう話なんだ。最後に、そのキリストって呼ばれている乞食が小屋に火をつける。まァ、イメージとしては東京よ燃えろっていう感じになっている。「燃えろ! 燃えろ!」って言いながら、バックにハレルヤがバンバンかかってラストシーンになる。これはすさまじい映画でした。それが足立君の最初のシナリオだった」(若松孝二)

lpo_adachi2.jpg 足立正生は監督としても『銀河系』(1967)、『性遊戯』(1968)、『女学生ゲリラ』(1969)などを作り、1971年には若松孝二と共にパレスチナを訪れ『赤軍-PFLP・世界戦争宣言』を撮る。そして、赤軍の主張に共鳴した足立氏は1974年にパレスチナに渡航し重信房子らと共に日本赤軍を結成する。映画の革命を起こした足立正生は、日本を去り、世界を舞台とした革命に身を投じることになったのだ。
 それ以降、日本映画界において足立正生の名前は伝説としてのみ語られる存在となった(同時に政治的には過激派として国際手配を受ける人物でもあったが)。しかし、冷戦体制崩壊後の世界情勢の変化により足立氏は、2000年3月日本へ強制送還され、翌年刑期を終えた。

 紆余曲折の末、何はともあれ日本に帰ってきた足立正生に会う機会を得たのは、2002年1月、宮崎学、三上治と一緒にプラスワンで行われたイベントでだった。長らく日本にいなかったとはいえ、パレスチナという国際政治上最も激動の場所で活動してきた足立氏の語る政治的視点は、非常に明快で説得力のあるものだった。特に9.11の同時多発テロ以降の混乱した状況において、テロリスト側の視点を持つ足立氏の言葉は、アメリカ追従の日本政府に対する痛烈な批判となっていた。足立氏にとって強制送還は不本意だったかもしれないが、大きな岐路に立っている日本にとって、足立正生の存在は非常に頼もしいと思ったものだ。
 その後も足立氏には何度もプラスワンに出ていただく機会を得た。かねてから「自分の人生を変えた」と足立氏を絶賛していた宮台真司との対談や、だめ連やCHANCE!の小林イチロウといった若い世代との対談など、足立氏の言葉はどんな時でも明快で多くの示唆を聞く者に与えてくれるものだった。

 今週の水曜日(2/9)、足立正生がネイキッドロフトに登場する。イベント「平野悠の好奇心なんでも聞いてやろう」のゲストとしてだ。34年ぶりの監督作品となる映画『十三月』の制作もスタートし、再び注目を集めている足立正生の今の言葉を聞く絶好の機会だろう。
 最後に、ROOFTOPの2002年9月号で足立氏にインタビューした時の言葉を引用したい。日本に帰ってきた時に受けた印象について質問した時の返答だ。

「私が歳をとってしまったということを差し引いても、人とコミュニケートすることが難しくなってると感じました。違った考えを持つ人と問題のピンポンをするために同じ土俵に出るということがコミュニケートだと思ってるんだけど、この対話が成立しづらくなっていると思います。意気投合はしなくても、違うなという事で相互に昇華していく、そういったコミュニケーションが以前はもっと機能してたなと。
 ここまで管理されて包囲されているという危機感を感じるから、僕はもう一度『シュールレアリスム宣言その4』というのを作って出さなければいけないんじゃないかというぐらい思っている(笑)。つまり、人間の解放と社会の解放というものに対してどれだけ戦えるのか、それをちゃんと提案するべきだと。そういう方法とか感性を味わったことのない世代とどうやって対等につきあうのか? そう思って最近は、ホームレスおじさんと思われながらも、ゲームセンターでうんこ座りしている若い人に近寄ったりするんですね(笑) でも僕はそこから始まると思ってる。ウンコ座りが立ち上がった時はすごいだろうと思ってるから」

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(イベント)
2/9(水)@Naked Loft
平野悠の好奇心なんでも聞いてやろう!復活Vol.1
「足立正生、映画と革命の軌跡」
34年ぶりの新作映画「十三月」を控えた足立正生に、激動の60年代から日本赤軍、パレスチナ問題、そして新作映画についてなんでも聞いちゃいます。
【GUEST】足立正生(映画監督)【HOST】平野 悠(席亭)
Open/18:30 Start/19:00
¥1000(+1order)

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